今回は、ビジネスアクティビティにおける時間と空間の「発酵(熟成?)」について、ちょっと真面目に考えてみたいと思います。
ゾーンに入る
皆さんは、いわゆる『ゾーンに入った』経験はありますか?
もしくはご自身が「ゾーンに入りやすい状況・環境」を自覚してますか?
400mハードル日本記録保持者の為末大さんは、生涯一度しか無いそうです・・・
あの一流アスリートが一度しかない、と言われると、私のような1.5流の元甲子園球児は、基、元目指していた球児は何も言えなくなりますが(笑)
今回は我々が本気で闘うビジネスシーンが舞台。
私はここぞという時には頻繁に侵入できるようにしています。
そのコツはシンプルな話、一人キリの静寂の“時空間”を確保するだけですが。
「フロー状態」とも呼ばれるこの状態、趣味やレジャーではなく、仕事で「集中力が全開」「熱中して没頭している状態」を創り出せるのは幸せなことであり、今後一人ひとりに必要な≒ビジネススキルだと考えています。
日本のオフィスワーカーは11分に1回話しかけられる
コロナウィルスという予期せぬ未曾有の外圧により、これまで中長期的な課題どころか単なる理想に近かったリモートワーク/テレワークのスタイルが、一気に短期的課題となり、そして今や職種によっては当たり前の、新常態となりました。
極めて私見ですが、遂に自分の理想とする時代が!ようやく時代が自分に追い付いてきた!などという傲慢な思いも心の中に秘めております。
これはもう不可逆的なフェーズに入ったと言ってよく、是非とも時計の針を戻すようなこと無きよう、世の経営者、ビジネスパーソンの皆様には切に願うところです。
と、言いますのも、よくよく考えてみてください。
皆さんは「職場で」「自席で」仕事に集中できますか?
私はもう社会人3年目の頃に「NO!」という結論に達しました。
- 他人の会話、愚痴、独り言おじさん
- 外線電話(呼び出し音/取り次ぐ方の声/代わった方の話し声/こちらから掛けた話し声)
- 内線電話、携帯電話の会話然り
- そして、、、話しかけられる・・・
この最後の「話しかけられる」。
日本のオフィスワーカーは実に、平均11分に1回もの頻度で周りから話しかけられているそうです。「ちょっといい?」。全然こっちは良くない(イラ)。
そもそも今回のテーマ、「ゾーンに入る」。
こんな頻度で自分時間にカットインされる状況で、ゾーンどころか集中すら出来ないはずです。
カリフォルニア大学アーバイン校で情報科学を研究するグロリア・マーク氏の研究結果:人が集中した状態で知的活動を行っているときに、それを遮るような刺激を与えられると、再び集中した状態に戻るまでに実に23分が必要
と、言うことは・・・、
1日中集中出来ていない人がほとんど!という悲しい状況です。
これまでは「会社にいる」「PCに向かって何かしている」ことが勤勉で美徳で、何か話し合えば仕事した感があったというのが事実ではないでしょうか。あの“ナントカ会議”然り。
しかし真の知的生産性を個々人が高めるためには、これからは「一人ぼっちの静寂の間」がますます必要不可欠と信じています。
「会社で過ごす」ことと、「仕事する」は全くの別物なのです。
言い換えれば、会社の自席で付加価値の高い仕事をしている人なんていないに等しい。(ノークレームノーリターン希望)
職場はもっぱら作業や処理のタスクを淡々と「こなす場」、そして情報交換やガス抜きのための「しゃべり場」として捉え直すようになったのが、今からもう18年くらい前のことになります。
しかし「しゃべり場」と自分が勝手に決めても、それは他の“勤勉な”方々にとってはご迷惑になりますので、自分がしっかりと仕事(知的作業・創造活動、並びに数字を扱う場合)に向き合いたい場合には、徐々に職場を離れるようになって行きました。
つまり「仕事をするために会社から離れる」のです。
自分にとってゾーンに入れる場所は?
これは私が営業という職種だから成り立っていたのは事実ですが、日々の営業活動を組み立てる中で、その動線上に“仕事をする時間”を設け(=つまりアポとアポの合間)、何種類かの空間候補をストックしておくようになりました。
日常で最もはかどる空間はやはりカフェ(全くの他人の会話はただのBGM)。
更に当時は多い時で月に1回、北米への出張がありましたので、この期間は最高の時間と空間が用意されていました。往復の雲の上とホテルの部屋です。
この頃に確信したのが「職場を離れると圧倒的に仕事がはかどる」でした。
そして品質の向上は言うまでも無く、結果としての営業成果・業績に目に見える効果として表出してきたことは、今でも鮮明に覚えています。
現在の会社に所属してからも、その状況はより一層顕著です。
現在の私のミッションはマーケティング戦略、営業戦略、そして戦略実行が中心ですから、特に重要なのは仮説思考や発想力、想像・創造力になります。企画書作成も多数。
カッコよく言えばクリエイティビティの発揮。
考える、考え抜くことこそが仕事だと認識しています。
そのためにも、最も仕事に不向きな場と環境、それが職場であり、会社であるわけです。(注:同僚がキライなのでは全くありませんよ。大好きです♪)
そうこうしていた2020年初頭、突然異常な世界が訪れました。
しかしこの状況は嘆いていてもまだまだ我々は無力であり、むしろ好材料として受け止められる側面もあるはずです。
何より、特に朝の通勤に忙殺されるタスクと、ストレスを含むコストが取り除かれ、朝食後すぐにミッションに着手出来るのです。
そして、“誰からも話しかけられることなく(笑)”、自身のルーティーンに沿って徐々にゾーンに身を置き、存分に自分の責務を果たすことが出来る状況を迎えたとも言えます。
これは一人ひとりが置かれている状況・環境がそれぞれに異なりますので、もちろん一概には言えませんが、少なくとも一人ひとりがより「生産性の高い」「付加価値の高い」仕事をするにはどうすればいいのか?
その状態に自分を持っていけるのはどのような条件下なのか?について、個々人が自らここで一度、これまでの経験を統計的に、解析的に棚卸し、“仕事“のスタイルを上書きしていくべき時と思います。勿論、ワイガヤの中にいる方が私は力を発揮出来る!という人もいることでしょう。
ただ、標準化され、均質化された空間・環境、同調意識や空気といった前提のフレームワークの中からは、独創性やジャンプ発想は生まれにくく、イノベーションなど起こりにくいのではないでしょうか。従来の枠組みの外側に立った思考を繰り返すことへのマインドセットが必要であり、VUCAとも言われる不透明なこれからの時代に生き残っていくためにも、「一人キリの静寂の中で思考を巡らし、試行し、深める」作業がますます大切になってくると考えています。それが近年よく耳にする成果主義やジョブ型、自律型人材やティール組織といった概念にも、とても重要で必要な構成要素であると考えています。