NECネッツエスアイ株式会社様
情報通信産業環境変化に適応したソリューション営業組織への変革を実現!
スキル診断とソリューション営業研修を組織に定着させ営業の意識と行動に変革をもたらす
NECネッツエスアイ株式会社(以下NESIC)では、2007年から営業担当者の行動を”モノ売り”から”コト売り”に変革をさせる取り組みを実施しています。その取り組みの中で、株式会社日本コンサルタントグループ(以下ニッコン)が提供する「ソリューション営業プロセス診断(以下SPC診断)」と「ソリューション営業研修」を効果的に活用して頂いています。今回は、それらをどのように活用して変革を実現したのかを、プロジェクトの要として尽力されてきた、営業統括本部 営業企画室 人材開発部 人材開発課長 林様にお話を伺いました。
NECネッツエスアイ株式会社について
NESICはNECの通信工事部門が独立した会社であり、日本電気工事、NECシステム建設、現在のNECネッツエスアイという社名変更を経て、2016年12月1日で創業63周年を迎えました。創業以来、ネットワーク分野が得意なSIerとして、国内ではPBX(電話交換機)の設置と運用や携帯電話の基地局建設を事業の中心として展開し、海外では海底ケーブルやプラント通信システムなどのネットワークインフラ工事分野などを請け負ってきました。しかし、通信技術の発達により、音声とデータ回線が結合されるようになると、今まで事業の中心を担ってきたPBX事業では利益を出しにくい構造になってきました。そうした中で、営業担当者が担う役割はPBXという”モノを売る”営業から、お客様の経営課題を解決する”コトを売る”営業へとスタイルの変革が求められるようになりました。現在、NESICの営業担当者は”モノ売り”から”コト売り”への変革を乗り越え、お客様の経営課題であるワークスタイル改革のお手伝いをさせていただくような企業へと成長を遂げています。
ソリューションにより、能力の見える化が実現
――「SPC診断」と「ソリューション営業研修」を導入した経緯と背景について教えてください。
林様)ニッコンのソリューション営業力強化について知ったのは、外部のセミナーで「営業力を測るSPC診断」の導入事例を伺ったことがきっかけです。当時、NESICではSFA(営業活動管理ツール)を導入して、営業担当者の活動の見える化を図っていたものの、能力と行動の紐付けが曖昧で、能力開発を行うに当たっての軸を見つけられずにいました。ニッコンの「SPC診断」は、ソリューション営業活動をベースとして、行動と能力が紐付けられていて、それぞれが数値化されている点で分りやすく整理されていました。さらに、ニッコンの保有する「ソリューション営業研修」が診断項目に関連付けられていて、弱みと判断されたプロセスやスキルに合わせて補強研修が行える仕組みが魅力的でした。
SPC診断 営業プロセス診断結果例 | SPC診断 営業スキル診断結果例 |
――「SPC診断」の導入当初について教えてください。
林様)導入当初は、ニッコンが保有する他社のデータのうち上位20社(全100社)のプロセスやスキル得点を目標値に設定して自社を分析しました。それは、当初の診断の目的として、ソリューション営業スタイルに変革するためには、他社と比較してNESICの営業担当者にはどのような能力が不足していて、どの能力を強化しなければならないのかを把握するためでした。つまり、他社を基準として、一定水準の能力を身に着けてもらうことを目的として診断を活用しました。
――「SPC診断」の導入後の効果はいかがだったでしょうか。
林様)1年目は、営業担当者一人ひとりの能力の特徴が定量的に測定できたため、診断結果から自己の強みや弱みを自覚させるために、営業担当者全員にSPC診断結果を活用した振り返り研修を実施しました。
そして2年目は、上司が部下のスキルを評価する「上司評価」を追加し、上司と部下の双方向で評価する取り組みを始めました。また、診断結果を基に上司から部下へ結果をフィードバックする面談を行いました。すると、SPC診断をしっかりと活用してフィードバックしている上司は、部下からの評価が高いという結果になりました。SPC診断は基本的に営業担当者個人の能力を診断するツールですが、その診断ツールを個人の能力把握に限らず、一人ひとりの意識改革のツールとして活用したり、上司と部下の面談のツールとして活用したりして、ツールを上手に”使い倒し”たことで、組織に効果的な影響を与えることが出来たと思っています。
能力の見える化によって、弱点に合わせた営業研修が可能に!
――ソリューション営業力研修の具体的な内容について教えて下さい。
林様)SPC診断の結果を営業担当者一人ひとりにフィードバックしたことで、自分の弱点に気付かせるという結果は得られましたが、個々のスキルにはまだばらつきがありました。そこで、「ソリューション営業力研修」を営業プロセスごとに実施し、一人ひとりの弱点補強に繋げていきました。また、営業プロセスの中で一番の課題となっていたプランニングの能力の向上に取り組むべく、「アカウントプラン研修」に力を注ぎました。さらに、「アカウントプラン研修」での学習効果を組織に浸透させるため、社内の取り組みでアカウントプランコンテストを実施した結果、次年度のSPC診断では、プランニングプロセスの得点が大幅に向上しました。
その他にも、「マネジメント能力」の強化のため、上司に「SPC診断活用セミナー」を実施して活用マニュアルを配布したり、人事システムに診断結果を掲載し上司と部下がいつでも閲覧できるような仕組みを構築したりして、普段のOJT場面でもスキル教育を意識させた指導が出来るようにしました。
ソリューション営業に関する言葉が共通言語に!
――ソリューション営業力研修の導入後の効果はいかがでしたでしょうか。
林様)SPC診断とソリューション営業研修を継続的に行ったことにより、ソリューション営業に関する言葉が社内で「共通言語」になっていきました。例えば、今までは「アカウントプラン」の内容について、一人ひとりが違ったイメージや項目で話をしていたため、上司と部下のコミュニケーションが表面的になりがちでした。しかし、今では共通のイメージや項目で話が出来るようになり、より内容の深い議論ができるようになりました。
また、ソリューション営業研修は、研修終了後のアンケート評価も高く、費用対効果の面では良い結果を生んでいます。特に、講師の評価が高く受講者に人気の高い研修となっています。そうした意味では、研修は内容が勿論重要ですが、講師が鍵だと改めて感じました。
――ニッコンの講師の印象はいかがでしょうか。
林様)講師の方については、とても誠実に対応していただいていると思います。受講者の評価も高く、その点についてはすごく評価をしています。
ニッコンに今後期待する提案としては、長いお付き合いになりましたので、弱点補強の視点から、「NESICの営業の強みはこうだから、こうした方がいい」といった、当社の営業の実情を踏まえた上で、客観的な提案をお願いしたいですね。
社員がいきいきと働く会社を目指して!
――今後の展開について教えてください。
林様)おかげさまで、弊社は”モノ売り”から”コト売り”への変革を果たし、ソリューション営業のスタイルが定着してきました。現在ではお客様のワークスタイル改革のお手伝いをさせていただくような企業へと成長できたと思います。ワークスタイル改革において気をつけていることは、「いくらハード面(ICTや体制)を支援しても、ソフト面(マインド)が変わっていかないとお客様のワークスタイルは変化することはない」ということです。これは、弊社にも当てはまることで、支援する私たちがいきいきと働いていないと、お客様は私たちにワークスタイル改革支援を任せたいと思わないでしょう。
そこで、私は将来を見据えた教育のステージを考えています。それは、SPC診断・ソリューション営業研修を通じて得たスキルと合わせて、社員が自立していきいきと働くためのマインド強化施策を実施し、「スキルやテクニックを磨くことがどうして必要なのか」を理解させることだと思います。営業スキルの教育と理解の促進だけでは、短期的な業績の向上しか望みえない恐れがあり、社会のため、お客様のために何をするのかという「心の教育」が必要なのです。スキルの教育と心の教育の両方を上手にサイクルさせていくことが重要だと私は考えています。
現在、当社では従業員の勤労に対するモチベーション調査をみると他社と比較しても高く、満足できる水準にあると思います。しかし、社員が働くことに幸せを感じているか、働くことにより誰かの役に立つことに喜びを感じているかといった点、つまりこの会社で働けることに感謝し会社や社会を良くすることに意義を感じて、さらに懸命に働き社会に貢献するというモチベーションが十分に浸透しているかどうかについてさらに検討を深める必要があるのではないかと考えています。それこそが当社の長期的観点からの利益をもたらし、会社の存続を確固たるものにするのではないかと考えているからです。松下幸之助さんは、「企業は社会の公器である」と言ったそうですが、まさにこのような企業の存在意義を常に問い直していくことが今後ますます重要になっていくのではないでしょうか。これが、営業スキルの教育に加えて企業やそこに働く人の存在の意味を問う「心の教育」を充実させていく意義だと考えています。幸い当社では社員の営業スキルおよび勤労意欲の向上により、業績が上がり、利益を稼ぐことができており、そうした状況を基盤に働く人、一人ひとりが自己実現の在り方を含めて、さらにモチベーションを高められる方向を探っていくことが望ましいと考えます。
今後は、社会やお客様から感謝され、社員が自立し、いきいきと働き、
「月曜日から会社に来るのが楽しみだ」「この会社で働けて幸せだ」
とそんな風に思える、“いい会社”を目指していきたいと思います。
お話を伺った方:営業統括本部 営業企画室 人材開発部 人材開発課長 林 淳一 様
取材地:NECネッツエスアイ株式会社 本社
公開日:2017年4月11日(名称等は、公開当時のものです)
企業情報
会社名 | NECネッツエスアイ株式会社 |
---|---|
本社所在地 | 〒112-8560 文京区後楽2-6-1 飯田橋ファーストタワー TEL 03-6699-7000(大代表) |
創立 | 1953年11月26日 |
代表者 | 代表取締役執行役員社長 和田 雅夫 |
資本金 | 131億22百万円 (2016年3月31日現在)<東証一部上場> |
売上高 | 2,800億円(2016年3月期:連結) |
事業内容 | ネットワークをコアとするICTシステムに関する企画・コンサルティングや設計・構築などの提供、および国内400ヶ所以上のサポートサービス拠点による24時間365日対応の保守・運用、監視サービスならびにアウトソーシングサービスの提供 |
従業員 | 7,464人(2016年3月31日現在:連結) |
公式サイト | http://www.nesic.co.jp/ |
コンサルタントの声
情報産業研究所 所長 原田 明人(ハラダ アキヒト)
情報通信業界は、ここ数年で環境が大きく変化しております。ハードウェアを基本とした販売から、ソフトウェアを軸とした販売に変わり、ソリューション型の営業が必須の時代となりました。NECネッツエスアイ(以下NESIC)も同様に、PBXを中心とした販売から、お客様の経営課題に直結した“働き方改革”を提案するソリューション型の営業にシフトしていきました。そうした環境変化に合わせて組織改革を推進し、営業一人ひとりの意識とスキルを変革させていくのは大変な労力であったと考えています。
私は、モノ売り営業には人間関係を構築する能力が求められ、コト売り営業にはお客様の課題を理解する能力が求められると考えています。NESICでは、SPC診断の結果を基に、この2側面の能力の両方をバランスよく教育していった点が、現在のような強い営業を作り出すきっかけになったと考えています。それは、NESICの営業担当者の特徴として、特出したスキルを持っている営業担当者よりも、スキルの得点が高次元でバランスしている方にハイパフォーマーが多く、スキルのバランスが営業成果に繋がる要素と考えられたからです。
また、SPC診断の結果を組織活動に活用した点が、成功要因と考えています。通常、SPC診断の集計結果の活用は自社の課題を特定するまでに留めますが、NESICでは個人の診断結果を、一人ひとりの営業担当者にフィードバックするために、研修を実施したり、営業マネージャーと部下の面談場面で活用したりしました。そうした効果は、営業担当者一人ひとりの活動や行動に影響を与え、行動変容に繋がっていきました。
今後、IT業界の営業担当者が扱う商材は、AIやIoTといった未知の技術を使ったソリューションになっていくかと思いますが、常にソリューション営業の原点に立ち返り、お客様の課題に合わせて、コトを売る意識を持ち続けてほしいと思います。それがNESICのように、営業担当の一人ひとりに浸透している組織は、強くそして成長できる営業組織になるのだと考えています。