社会福祉法人白銀会様
コンサルティング経済的・社会的な自立と自律を目指した“働くことを中心しとした支援”を行うために
白銀会様は、知的障害者入所授産施設「しろがね苑」、知的障害者通所授産施設「銀の笛」、「ワークセンターしろがね」(就労継続支援B型)、「トラットリア・アグレステ」(就労継続支援B型)など、障害福祉サービス就労系事業を運営する社会福祉法人です。この他、12ヶ所のグループホームや1ヶ所のケアホーム、生活介護センター(生活支援センター)「ゆう」、障害者就業・生活支援センター「かい」なども運営しています。
白銀会様が実践しているのは、自分らしい暮らしをする為の支援です。知的ハンディのある方に、生活・就労支援を施して、4〜5年の期間で一般企業に送り出しています。職員は「できることは自分でする。できないことはサポートする。」を共通の認識とし、知的ハンディのある方の個性のありのままを受け入れ、やる気の育成・支援にじっくりと取り組んでいます。また、働くことのトレーニングメニューも豊富で、今までに約200名の知的ハンディのある方たちが、工業・農業・サービス業などのさまざまな企業・法人に就職しています。
日本コンサルタントグループ(以下、ニッコン)は、1997年の事業化構想策定業務(中長期ビジョン策定)を皮切りに、20年間に渡ってさまざまな業務をお手伝いしてまいりました。今回は、白銀会理事長の長谷川淺美様に、事業展開とニッコンとの関わりを中心にお話をお伺いしました。
理事長の想いを周囲の人に共有する経営ビジョン策定
――社会福祉法人白銀会を始められた経緯はどのようなものだったのでしょう。
長谷川様)父親が70歳を過ぎたとき、人生最後の仕事として「自ら蓄積してきたものを福祉に役立てたい」と、1990年に設立しました。私は以前、埼玉県内で聴覚障害のある方々への支援に携わっており、そうした中でハンディのある子どもたちとも知り合い、支援事業を始めました。当時の知的障害者施設は、入所すると出口が無い状態でした。ですが、ハンディがある人は、仕事ができないのではなく、仕事の場とチャンス、そして適切な支援がないだけなのです。そこで、施設開設当初から、4年間と期限を区切り、自立訓練・就労訓練を行い、企業へ送り出すことを目指しました。まったく新しい取り組みでしたから、周りからは驚かれたり、非難も受けたりもしました。今思えば、当時の福祉の常識というものを知らなかったからこそ生まれた発想かもしれません。
――その後、着実に実績を残すとともに、早い時期に中長期ビジョンを策定されました。
長谷川様)私たちがどのような想いで、どのような方向に向かって進んでいくのかを、明文化すべきだと考えました。施設の運営にはマーケティングの発想も必要ですし、18歳で施設に入所した方の人生をずっと支援していくための事業展開も重要になります。私が頭の中で思い描いていたことを、関わる人全員で共有できるものにまとめたいと思い、こうした業務のプロであるニッコンの中山明さんに参画していただいて「中長期ビジョン及び平成10年度事業計画」を策定しました。
――中長期ビジョンをまとめたことによって、どのような成果がありましたか。
長谷川様)多くの方に私たちが目指そうとしていることを理解していただくのに、役立ちました。私たちの存在意義、つまり、私たち白銀会は何のために社会に存在しているのかを、入所を検討中の方、納税者、役所の方にわかってもらうことができました。また、職員にとっても大切な指針となりました。私の考えや理念を現場で具現化していくのは、職員一人ひとりです。特に私たちが接するのはハンディのある人達ですから、職員の気持ちや心構えはとても重要です。中長期ビジョンによって、職員全員が根幹の大切な部分をぶれずに、しっかり共有することができたように思います。
常識を超えたB型事業所「トラットリア・アグレステ」を開業
長谷川様)パンフレットも施設のハード面の概要や定員だけを掲載しても意味がありません。私たちは具体的にどういう支援をするのか、入所したらどのような日々を送るかなど、具体的な内容がわかりやすく理解できるパンフレットを作成しました。ホームページも同様です。私たちのことを、誤解なく、きちんと伝えたいので文言には特にこだわりました。私が納得するまで何度も作り直していただいたので、ニッコンさんにはご苦労をおかけしましたね。
――3年ほど前にオープンした「トラットリア・アグレステ」の開業支援もお手伝いさせていただいていますが、これはどのような施設ですか。
長谷川様)アグレステは、ハンディのある人が飲食サービスの就労トレーニングを行うための就労継続支援事業B型事業所です。これは、私がずっと以前から開設したいと考えていた施設です。開設の目的のひとつは、まず農業事業とのコラボレーションです。「白銀ファーム」という農業事業を通して無農薬野菜を育てているのですが、その野菜の供給先の1つとしてのレストランです。そして、もうひとつは、サービス業のトレーニングです。ハンディのある方にとって、接客は苦手な分野です。レストランでは、毎日違ったお客様を相手に、日替わりのメニューを覚え、笑顔で臨機応変な対応しなくてはなりません。とてもハードルは高いのですが、それを超えれば就労先の門戸は広がります。また、接客業ですから、皆さんに知的ハンディがあっても社会に通用していることを見て確認してもらうこともできます。最初は誰もが無理だと考えていたようですが、オープンしてみると、見事に接客の仕事をしてくれます。開設前にニッコンさんに1週間の接客研修をしていただいたのですが、その研修の内容がマニュアル化されており、今では徹底されています。その結果、今ではアグレステがB型事業所だと気づかないお客様も多いようです。
――お店の内外観もとてもスタイリッシュで、B型事業所だとは思えない雰囲気です。
長谷川様)オープン前に、中山さんと日本各地の障害者が運営しているお店を視察したのですが、いかにもB型事業所という施設ばかりでした。これではダメだと思いました。
来店されるお客様に、非日常感にあふれる空間を提供するため、使用した木材、壁、テーブル、イス、ピッツア窯、庭、器、野菜・肉・パン・ワイン・コーヒーなどの食材、すべてにこだわり、すべてに物語があります。また、中山さんと一緒にシェフを伴ってイタリアを訪れ、本場の味と雰囲気も学んできました。
当初、設計の段階では、男性の建築家の方に私の意図や想いを伝えていたのですが、どうもイメージが違ったプランばかりが上がってきて困っていました。そこで、中山さんが建築計画の黒田菜央さんという女性建築家を紹介していただきました。黒田さんに出会えてとても助かりました。
組織を永続的に存続させるための仕組みづくり
――現在は人事考課制度整備をお手伝いさせていただいています。
長谷川様)私も齢を重ねてきましたし、白銀会としての施設も増え、事業も多角的な展開となってきました。いずれ私も現職を退くことになりますから、次の世代へのバトンタッチのためにも、組織としてしっかり固めておきたいと、ニッコンさんに人事考課制度の整備をお願いしています。これは、例えば「施設長になればこういう仕事をしてください」など、それぞれの職能要件まで踏み込んだもので、組織が永続的に継続していくための基盤となるものです。
――今後はどのような事業の展開をお考えでしょうか。
長谷川様)ハンディのある方と、高齢者、シングルマザー、学生など多彩な方が集まるシェアハウスを立ち上げてみたいと思っています。そこで、交流を図り、互いに支援し合い、学び、例えば学生の方が社会に出たときに「あんな人もいたな」と思ってもらえるような場にできればと思います。
また、ハンディのある方にとっての終の棲み処も考えていきたいですね。就労すればいずれは定年退職があるので、その方の人生の終い時まで支援することが、私の責任だと思っています。
――長谷川理事長にとって、ニッコンはどのような存在でしょう。
長谷川様)中山さんは信頼できるパートナーだと思っています。私が何かを始めたいときには、「こんなことやりたい」「こんな人を紹介してほしい」など、お声掛けします。それに対して、仕事になる、ならないは別にして、中山さんはしっかりお応えいただいています。経営ビジョン策定やパンフレット、お店づくりなどに関して私たちは素人ですから、しっかりしたプロの方にお任せしたいと思っていますが、中山さんはそれらのパイプ役になっていただいています。
――今後、ニッコンにどのようなことを期待されますか。
長谷川様)これからも、今まで通りいいお仲間であってほしいと思います。また、中山さんからも様々なご提案をいただいており、来年は企業セミナーでお話しさせていただくことになっています。これからも、私で協力できるところは協力していきたいと思っています。お話を伺った方:社会福祉法人白銀会 理事長 総合施設長 長谷川淺美 様 取材地:しろがね苑公開日:2018年1月9日(名称等は、公開当時のものです)
法人情報
法人名 | 社会福祉法人白銀会 |
法人所在地 | 〒315-0005 茨城県石岡市鹿の子4-16-5 TEL.0299-22-3215 |
創立 | 1990年12月 |
代表者 | 理事長 総合施設長 長谷川淺美 様 |
事業内容 | 事業所5か所、グループホーム数13か所 |
職員数 | 72名(パート職員:約15名) |
利用者数 | 約200名 |
公式サイト | http://siroganekai.com/ |